松戸の歴史散歩なら!徳川家ゆかりの「戸定ヶ丘歴史公園」

突然ですが、松戸駅から徒歩約10分の場所に、江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜の弟が暮らした別邸があるのをご存じですか?

しかも、その別邸は国の重要文化財に指定され、「日本の歴史公園100選」にも選ばれています。

先日、秋の休日に松戸を散歩していたら、「戸定みその坂」という坂道を発見しました。なんだか気になって上ってみると、立派な茅葺門が見えてきました。

「ここは何だろう?」と思って近づくと、「戸定ヶ丘歴史公園(とじょうがおかれきしこうえん)」という看板が。調べてみると、水戸徳川家の最後の藩主・徳川昭武が造った別邸と庭園が残されている場所でした。

公園に一歩足を踏み入れると、都会の喧騒を忘れるような静けさに包まれます。美しく手入れされた芝生の庭園、江戸川を望む高台からの絶景、そして明治時代の徳川家の暮らしぶりを間近に感じられる戸定邸。

まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような、素敵な時間を過ごすことができました。
今回は、松戸の隠れた名所「戸定ヶ丘歴史公園」の魅力をたっぷりとご紹介します!

徳川家最後の将軍の弟が暮らした!戸定ヶ丘歴史公園とは

戸定ヶ丘歴史公園は、松戸駅東口から歩いて約10分の高台にある歴史公園です。

水戸徳川家の第11代藩主で、江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜の異母弟である徳川昭武が造った別邸と庭園を中心に、平成3年(1991年)から一般公開されています。

総面積は約2.3ヘクタール。東京ドームの半分ほどの広さがある敷地には、戸定邸、戸定歴史館、茶室の松雲亭、立派な茅葺門などが並びます。

平成19年(2007年)には「日本の歴史公園100選」に選定されました。全国で100か所しか選ばれていない貴重な歴史公園です。

松戸駅から「戸定みその坂」という坂道を上っていくと、まず目に飛び込んでくるのが茅葺門。この門をくぐると、まるで別世界に来たかのような静けさに包まれました。

平日の午前中に訪れたのですが、散歩を楽しむ地元の方や、カメラを持った写真愛好家が数名いらっしゃるくらい。とても静かな雰囲気でした。

公園内は緑豊かで、鳥のさえずりが聞こえてきます。都会にいることを忘れてしまうような、穏やかな時間が流れていました。

ところで、徳川昭武ってどんな人だったのでしょうか?

昭武は、幕末に活躍した水戸藩9代藩主・徳川斉昭の十八男として生まれました。15代将軍・徳川慶喜の12歳年下の弟です。

慶応3年(1867年)、なんと14歳の若さで将軍の名代としてパリ万国博覧会に派遣されました。その後、約5年間ヨーロッパに滞在。当時としては珍しい国際派だったんです。

明治維新後は水戸徳川家を継ぎますが、明治16年(1883年)に家督を養子に譲って隠居。翌年の明治17年(1884年)に、この松戸の地に戸定邸を完成させました。

松戸に別邸を構えた理由は、江戸時代から松戸が水戸街道の宿場町として水戸藩とつながりが深かったため。また、江戸川を望む高台という立地も気に入ったようです。

昭武は写真撮影が大好きで、1,000枚以上の写真を撮影し、500枚以上のプリントが今も残されています。その写真は、庭園の復元工事にも活用されたそうですよ。

明治時代にタイムスリップ!国重要文化財の戸定邸

公園の奥に進むと、戸定邸の入口が見えてきます。

入館料は大人250円。戸定歴史館との共通券なら320円とリーズナブルです。受付で券を購入し、いよいよ中へ。

靴を脱いで上がると、まず目の前に広がったのは長い渡り廊下。ピカピカに磨かれた廊下の先には、美しい庭園が見えます。

「わあ、ステキ!」思わず声が出てしまいました。

戸定邸は、平成18年(2006年)7月に国の重要文化財に指定された、とても貴重な建物です。何が貴重かというと、明治時代の徳川家の住まいがほぼ完全に残っているのは、日本でここだけなんです。

明治17年(1884年)4月に完成した戸定邸は、約2年の建設期間を経て作られました。その後、増築を重ねて、現在は9棟の建物に23の部屋があります。
建物の構造がとても面白くて、大きく3つのエリアに分かれているんです。

1つ目は「表向き」で、来客をもてなすための接客用の空間。立派な座敷や書院造りの客間があります。

2つ目は「中奥」で、徳川昭武やご家族が実際に生活していた居住空間。
3つ目は「奥向き」。使用人の方々が働いていた空間ですね。

全ての建物が渡り廊下で結ばれていて、歩いているとまるで迷路のよう。「次はどんな部屋が待っているんだろう?」とワクワクしながら進みました。

廊下の窓から見える庭園の緑が本当に美しくて、歩みを止めて何度も眺めてしまいました。昭武が建物と庭園の調和をとても大切にしていたことが、よくわかります。

客間に入ると、床の間や違い棚が設けられた、武家屋敷らしい書院造りの空間が広がっています。広々とした座敷からは、庭園を一望できるんです。

「ここから昭武さんは、どんな景色を眺めていたんだろう?」そんなことを考えながら、しばらく座って庭を眺めていました。

実は、兄の徳川慶喜もこの戸定邸を何度も訪れています。明治22年(1889年)に初めて訪れてから、亡くなるまで何度も足を運んだそうです。

慶喜と昭武は、ここで一緒に写真撮影を楽しんだり、狩猟に出かけたり、陶芸をしたりして過ごしたそうです。兄弟の仲の良さが伝わってきますよね。

部屋をひとつひとつ見ていくと、当時の徳川家の暮らしぶりが偲ばれます。静かで厳かな雰囲気の中、まるで明治時代にタイムスリップした気分になりました。

戸定邸には空調設備がないので、夏はかなり暑いそうです。スタッフの方が「夏に来られる場合は、こまめに水分補給してくださいね」と教えてくださいました。

私が訪れたのは秋だったので、ちょうど良い気候で快適に見学できました。春や秋の訪問がおすすめですよ。

見学時間は、ゆっくり見て回って約30分から40分ほど。写真を撮りながらじっくり見たい方は、1時間くらい見ておくといいかもしれません。

富士山も見える絶景!国名勝の戸定邸庭園

戸定邸の魅力は、建物だけではありません。庭園も素晴らしいです。

戸定邸庭園は、平成27年(2015年)3月に国の名勝に指定されました。千葉県内に4つしかない国の名勝のひとつです。

何がすごいって、芝生が植えられた洋風庭園としては日本最古なんです。

徳川昭武がヨーロッパで見聞きした知識を活かして、明治17年(1884年)から本格的な造園を開始。6年後の明治23年(1890年)に完成しました。

庭園は大きく2つのエリアに分かれています。
ひとつは「書院造庭園」。戸定邸に隣接する、日本の伝統的な様式の庭園です。面積は小さいですが、とても丁寧に作り込まれています。
もうひとつは「東屋庭園」。こちらは広々とした芝生が特徴の洋風庭園です。

実は東屋庭園、一度は失われてしまったのですが、平成30年(2018年)5月に復元工事が完了しました。復元の際には、昭武が撮影した写真が大活躍したんです。
写真好きだった昭武が残してくれた記録のおかげで、当時の姿を忠実に再現できたんですね。

さて、この庭園の最大の魅力は、何といっても眺望です。
戸定邸は標高約25メートルの高台にあります。西側には江戸川が流れていて、晴れた日には江戸川越しに富士山が見えるんです。

私が訪れた日は、残念ながら富士山は見えませんでしたが、江戸川の景色だけでも十分に美しくて、しばらく眺めていました。

地元の方にお話を伺うと、「冬の空気が澄んだ日は、富士山がくっきり見えて本当に綺麗ですよ」と教えてくださいました。次は冬に訪れてみたいなと思いました。

東京スカイツリーも見えるんですよ。富士山とスカイツリー、江戸時代と現代が一緒に見える景色って、なんだか不思議ですよね。
この素晴らしい眺望は「関東の富士見百景」にも選ばれています。

通常、庭園の中には入れないのですが、毎月「とじょうの日」には特別に庭園内に入ることができます。
「とじょうの日」は、原則として毎月10日、20日、30日の3回。この日は、普段は見られない角度から戸定邸を眺めたり、手入れの行き届いた芝生の上を歩いたりできます。

庭園内から見上げる戸定邸も、また違った趣があるそうです。次回はぜひ「とじょうの日」に合わせて訪れてみたいと思います。

芝生の緑、木々の緑、江戸川の青、そして空の青。自然の色彩に囲まれて、心がとても穏やかになりました。

ベンチも設置されているので、庭園を眺めながらのんびり過ごすこともできます。実際、読書をしている方や、スケッチをしている方もいらっしゃいました。

梅・桜・紅葉!四季折々の美しさを楽しめる

戸定ヶ丘歴史公園の魅力は、季節ごとに違った表情を見せてくれることです。
私が訪れたのは11月初旬の秋。公園内の木々が少しずつ色づき始めていて、とてもキレイでした。

「もう少し遅い時期だと、もっと紅葉が見られますよ」と、当日お茶会をされていた方々が教えてくださいました。

11月中旬から下旬にかけて、紅葉が見頃を迎えるそうです。イチョウやモミジが色づき、赤や黄色に染まった公園はまた格別だとか。

「松戸の紅葉スポットとしては、ちょっと穴場なんですよ」と、その方は嬉しそうに話してくださいました。

確かに、あまり混雑していないので、ゆっくりと紅葉を楽しめそうです。来年の秋は、紅葉の時期に合わせて再訪したいなと思いました。

そして、この公園は梅の名所でもあるんです。
公園の奥には梅園があって、紅白の梅の古木が植えられています。見頃は2月中旬から3月中旬。

早春の柔らかな日差しの中で咲く梅の花は、とても趣があるそうです。梅の香りに包まれながらの散歩、想像するだけで素敵ですよね。

「梅の時期は、カメラを持った方がたくさん来られますよ」と、先ほどの方々が教えてくださいました。

春には桜も楽しめます。ベニシダレザクラをはじめ、複数種類の桜が園内に植えられています。

桜の時期には、多くの花見客が訪れるそうです。歴史ある建物と桜のコラボレーション、きっと絵になる光景でしょうね。

さらに、公園内には「ひなげしの小径」という場所もあります。
ここには、與謝野晶子と鉄幹の歌碑が建っています。平成23年(2011年)に除幕されたこの歌碑、文学好きの方にはたまらないスポットだと思います。
晶子と鉄幹も、この松戸の地を訪れていたんですね。歴史の深さを感じます。

園内を歩いていると、コウヤマキやヒヨクヒバといった大きな木々も見られます。これらは昭武が植えたものだそうです。

100年以上の歴史を持つ木々が、静かに立っている姿は圧巻でした。

冬は、富士山が最もよく見える季節です。空気が澄んでいるので、富士山がくっきりと見えます。
「1月や2月の晴れた日の朝がおすすめです」と、受付の方が教えてくださいました。

春夏秋冬、どの季節に訪れても楽しめる戸定ヶ丘歴史公園。年に何度も訪れたくなる場所だなと感じました。

松戸駅から徒歩10分!アクセス抜群で気軽に歴史散歩

戸定ヶ丘歴史公園へのアクセスは、とても便利です。

JR常磐線と新京成線が乗り入れる松戸駅の東口から、歩いて約10分。都内からのアクセスも抜群ですよね。

駅を出たら、まず右手に進みます。「戸定ヶ丘歴史公園」への案内看板も出ているので、迷うことはないと思います。

5分ほど歩くと、「戸定みその坂」という坂道に差し掛かります。
この坂、名前がとても風情があって素敵だなと思いました。平成22年(2010年)に、天皇皇后両陛下の行幸啓を記念して命名されたそうです。
坂道は少し急です。私も「ちょっときついかな」と思いましたが、距離は短いのですぐに到着しました。

良い運動になりますよ。日頃の運動不足解消にもぴったりです。
坂を上りきると、立派な茅葺門が見えてきます。「あ、着いた!」という達成感がありました。

駅から公園までの所要時間は、私の足で約10分でした。ゆっくり歩いても15分ほどだと思います。

車で来られる方には、無料の駐車場も用意されています。
駐車場は2か所あって、合わせて乗用車が46台停められます。バス用のスペースも6台分あるので、団体での訪問も安心ですね。

私が訪れた平日の午前中は、駐車場にも余裕がありました。週末や紅葉シーズンは混雑するかもしれませんが、それでも46台分あるので大丈夫そうです。

公園の開園時間は、午前9時から午後5時まで。
休園日は月曜日です。ただし、月曜日が祝日の場合は翌日が休園日になります。あとは年末年始、12月28日から1月4日もお休みです。

訪れる前に、念のため公式ホームページで開園状況を確認することをおすすめします。
注意点がひとつあります。ペットを連れての入園はできません。
愛犬と一緒に散歩したいなと思っていた方は、残念ですがペットはお留守番ですね。

公園全体と戸定邸、戸定歴史館をゆっくり見て回ると、所要時間は約1時間30分から2時間ほどです。
時間があまりない方は、戸定邸と庭園だけでも約1時間で楽しめますよ。

私は写真を撮りながらのんびり見て回って、約2時間ほど滞在しました。「あっという間だったな」というのが正直な感想です。

松戸駅周辺には飲食店もたくさんあるので、公園を楽しんだ後にランチやカフェを楽しむのも良いですね。

松戸駅から10分!何度でも訪れたくなる戸定ヶ丘歴史公園(とじょうがおかれきしこうえん)

松戸駅から徒歩約10分という気軽さで、江戸時代の歴史や美しい庭園を楽しめる戸定ヶ丘歴史公園。

国の重要文化財に指定された戸定邸で明治時代の徳川家の暮らしに触れたり、富士山も見える絶景庭園でのんびり過ごしたり、四季折々の花を楽しんだり。何度訪れても新しい発見がありそうです。

「日本の歴史公園100選」に選ばれているのに、意外と知られていない穴場スポット。だからこそ、ゆったりと静かな時間を過ごせるんですよね。

歴史好きな方はもちろん、散歩が好きな方、写真撮影が好きな方、デートで素敵な場所を探している方にもおすすめです。

入館料も大人250円からとリーズナブル。無料の駐車場もあるので、家族連れでも気軽に訪れられます。

私も、季節を変えてまた訪れたいと思っています。次は梅の咲く早春か、富士山がくっきり見える冬の晴れた日がいいかな。

松戸に住んでいる方も、これから住もうか考えている方も、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

きっと、松戸の新しい魅力に出会えるはずですよ!

戸定ヶ丘歴史公園(とじょうがおかれきしこうえん)
住所:千葉県松戸市松戸714-1
アクセス:JR常磐線「松戸駅」東口から徒歩 約10分
新京成線「松戸駅」東口から徒歩 約10分
TEL:047-362-2050(戸定歴史館)
開園時間:9:00-17:00
休園日:月曜日(祝日のときは翌日)、12月28日から1月4日
駐車場:無料(乗用車46台/バス6台)
入館料: 【戸定邸】大人250円、高校生・大学生100円、中学生以下無料 【戸定歴史館】大人150円、高校生・大学生100円、中学生以下無料 【共通券】大人320円、高校生・大学生160円 ※身体障害者手帳、療育手帳または精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方とその介護者1名は無料(手帳提示要)
公式HP:https://www.city.matsudo.chiba.jp/tojo/

※記載情報は取材当時のものです。変更している場合もありますので、ご利用前に公式サイト等でご確認ください。
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あきひとSW
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千葉県東葛地域に住んで20年近く、流山、柏、松戸を中心に活動をしてきました。地域を愛する気持ちは皆さんにも負けず、私の記事で町の活性化につなげていきたいと考えております!!